第2講 「エネルギーとは何か」   
C. エネルギーのかたち
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エネルギーって、つまり何? 鐘楼堂

 さて、まずエネルギーとは何であるかを簡単に確認する。

 ひとことで表現すると仕事をする能力≠ェエネルギーであるが、こういうと今度は仕事≠フ意味を明確にする必要が生じる。そこで、

    『 仕事〔J〕≠ニは力学的な意味で、力〔N〕≠ニ変位〔m〕≠フ内積である 』
と定義される。ここで「内積」というのは、力と変位をそのまま掛けるのではなく、(変位の大きさ)と(変位する方向の力の成分)との積か、または(力の大きさ)と(力の働く方向の変位の成分)との積のいずれかなので注意しよう。つまりエネルギーとは、その単位1J(ジュール)を1N(ニュートン)の力で物体1m(メートル)運ぶ仕事として
    1J = 1N × 1m = 1Nm
と定義された量だ。

お寺の鐘をつけば鐘が振動し、周りの空気(窒素や酸素など)の分子集団も振動する。野球でボールを打ったり、サッカーのボールを蹴ったりすると、ボールはどちらも飛んでいく。

このような鐘、分子、ボールなどの物体の運動は、『運動のエネルギー』があることを意味している。

鐘や分子集団の周期的な振動を波(波動)とよぶ。

 鐘の振動は局所にとどまる波 ― 定常波 ― だが、鐘の周囲の空気分子の集団的振動は、空間を伝わってエネルギーを運ぶ波 ― 進行波 ― となる。

進行する波とはいっても、集団的振動(=波、または波動)が伝わるのであって、風のように空気分子そのものが流れていくのではないので注意しよう。波は空気分子が近くの他の分子を巻き込みながら、少しずつ時間差をおいて行きつ戻りつする振動で、その揺れのパターン(動きの形)が空間を伝わっていくのである。だから注意してほしいのは、例えば「風が振動する」と記せば、それは“空気分子集団の流れが揺れる”という意味不明の誤表現に相当するということだ。

スピーカーの振動膜も鐘と同じように空気(分子)の集団的振動を引き起こして音の波を発生させる。空中を音波が伝わるとき、空気の各分子は波の進む方向に沿って短距離間を往復運動(縦振動)する。

 波を小さなスケールで(ミクロ的に)見ると、空間内での分子などの運動が隣の分子に次から次へと伝達されていく現象である。大きなスケールでも(マクロ的に見ても)、エネルギーの伝わる――流れる一つの形態であることに変わりはない。

同じ分子の振動でも、空間的な周期性や時間的な同期のない運動体の集まりは熱(熱振動)現象として表れる。また、電荷を帯びた粒子が振動するとき電波や光を放射したり、外からやってきた電磁波を吸収または反射する。アンテナのなかでは電子がこのような粒子の役をする。


    〔BREAK〕★ホラ貝の殻を耳に当てると潮騒の音が聞こえるのはなぜか?

力学的エネルギー・岡山からデブリを観測
 宇宙空間を漂うごみ「スペース・デブリ」が衛星、宇宙基地、スペースシャトルなどにぶつかると、その部分が高温高圧になり、金属の壁も一瞬のうちに溶けて蒸発し、大穴があく。


 岡山県美星町には、2,002年度までに、高度500kmで直径10cm以上のデブリが観測できる望遠鏡が敷設される。また、上齋原村に2,004年度までに建設予定の高周波レーダー施設では、高度500kmで直径1m以上のデブリを捉えることが出来る。


デブリが衝突によって停止することで、デブリのもっていた運動エネルギーがすべて、壁に穴をあける仕事と発熱の熱エネルギーとに変換されてしまう。この際、衝突の前後で「力学的エネルギー(運動エネルギー、ポテンシャル・エネルギー)」+「熱エネルギー」の合計量は一定に保たれる(変化しない)。エネルギー保存の法則が成り立っている。

衝突前 衝突後
運動エネルギー熱エネルギー運動エネルギー熱エネルギー
(1/2)m [kg] (v [m/s]) 2 00(J [J/cal])×(Q [cal])
エネルギーの単位は 1J = 1kg(m/s)2 であり、熱量[cal]を仕事量[J]、または
力学的エネルギー[J]に換算する係数は熱の仕事当量J = 4.2J/calである。


    〔BREAK〕★デブリの平均速度は、およそ1×10 4m/sである。300gのデブリが衝突してきて、力学的エネルギーが熱エネルギーに変換されると、その発熱量は、およそ大人1人が1日に食物から摂取するカロリー量に匹敵することを確かめよ。[物/社]

 サッカーボールを蹴ったり、バットでボールを打ったりするのも同じことで、『足(または選手)がサッカーボールに対して仕事をする』とか、『バット(またはバッター)がボールに対して仕事をする』とかいう表現が使われる。

波の場合にも、分子がその隣の分子に対して仕事をして揺り動かし、その隣へ、さらに隣へと、次々に振動が伝えられるので「波」といううねり≠ノなる。他の物体に対して仕事をし、それを運動させることが可能な状態(振られたバットや、運動するスペース・デブリ)には、力学的エネルギーが保持されている。

力学的エネルギー ..... 
  • 運動エネルギー
  • ポテンシャル・エネルギー
    (位置エネルギー)
  • 熱エネルギー
    (質量だってエネルギー)

    力学的エネルギーが関与するかたちで、ある物体Aが他の物体Bと相互作用し、(都合よく)エネルギーを変換することを「AがBに対して仕事をする」という。

    AがBに対して仕事をする ..... 
  • 力学的エネルギー ⇒ 力学的エネルギー and or 熱エネルギー

  • 熱エネルギー ⇒ 力学的エネルギー + 熱エネルギー
    (位置エネルギー)
  • たとえ運動していなくても、運動を引き起こすことのできる(ポテンシャルな)状態であれば、運動エネルギーがあるのと同じだ(ただし、「ポテンシャル・エネルギーがある」という)。矢をつがえて弓を引いた状態には、矢を飛ばすだけの「ばねの位置エネルギー」というポテンシャル・エネルギーが蓄えられている。スキーのジャンプ競技では、スタート地点で待つ選手が「重力の位置エネルギー」というポテンシャル・エネルギーをもっている。高い位置にある貯水池の水が発電能力を保持しているのと同じだ。これら矢や水には『位置のエネルギー(ポテンシャル)』があるという。

    ジャンプ前の滑降で、位置のエネルギーが運動のエネルギーに変換されるのでスピードが増す。このとき位置のエネルギーと運動のエネルギーの合計は変わらない。実際には空気抵抗があるので、ジャンパーが空気に対してする仕事も含めて合計が変わらない。このことを『エネルギー保存の法則』という。

    スキーの滑降についての簡単な考察から、保存力と散逸力の違いが理解できる(基礎物理学第7講「保存力と保存力の場」を参照)。


    とは、そして熱エネルギーとは
     多くの場合、私たちが利用するエネルギーの形態は、ランダムに運動する原子や分子のミクロな運動のエネルギーを集団としてマクロにまとめたものである。気体や液体の内部において、分子どうしで相互に特別強すぎるという関係がない(たとえ隣りあう分子であっても一心同体のごとく行動をともにするというような強い関係がないなど、簡単なことばでランダムな―≠ニよばれる)場合を『熱運動』という。その運動エネルギーをマクロにまとめたものが『熱エネルギー』である(「社会とエネルギー資源」第6講 を参照のこと)。

    化石燃料を燃焼させて水を沸騰させるときのエネルギー変換(化学エネルギー→プラズマ粒子の運動エネルギー→熱エネルギー)や、内燃機関でのシリンダー内のピストンを動かす変換(化学エネルギー→プラズマ粒子の運動エネルギー→運動エネルギー)には、いずれも分子や原子などの『熱運動』が関係している。

    一般的な定義として、燃焼過程などでの熱エネルギーの移動≠熱≠ニいう。たとえばメタンが燃焼するとき分子の結合を壊す激しい分子振動が生じることは、分子レベルでの(ミクロな)運動のエネルギーが熱エネルギーのもとになっていることを教えている。このような運動エネルギーのことを、メタンという物体系での内部エネルギーという。

    次の反応では、新しい結合が完了するときに放出されるエネルギーから、はじめのメタンの結合が壊れるときに吸収されるエネルギーを差し引いた残りが、反応熱として放出される熱エネルギーになる。圧力一定の条件におかれた反応系が生成する熱エネルギーをエンタルピー≠ニいう。

     一方、光(電磁波)のエネルギー、いわゆる放射エネルギーというのは『光子』とよばれる光の粒子全体の運動エネルギーのことだ。光子はふつうの物質粒子と異なり、力学ではなく量子力学で考えなくては正確なことは記述できない。量子力学によれば、光波の振動数がν[Hz]のとき光のエネルギーはνh [J]だ。h はプランク定数と呼ばれる。電子レンジのマイクロ波や太陽光のエネルギーがこれだ。電子レンジの箱内では発信周波数2,450MHzで水分子の中に内部エネルギーが供給される。太陽光発電では光子のエネルギーを直流電流に変換する。その変換効率は現在の技術で17%だが、新エネルギー研究者は10年以内には20%にするのが目標だという。


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