「エネルギーって、...」

(第7講) 保存力と保存力の場 (その2)

保存力の性質

 私は保存力と散逸力のことを考える際に,しばしばスキーというスポーツの醍醐味に思いをはせる。スキーヤーは,重力と雪面からの力(摩擦力を含む)と風の抵抗とを受けながら,若干の内部自由度をもって運動する物体とみなされるからだ。

 『物体に働く力が保存力である』というのは,物体が移動する際その力のする仕事が始点と終点の位置だけで定まり,途中で通る経路にはよらないことをいう。そのような力の例として,重力,万有引力,(フックの法則にしたがう)弾性力,磁気力などがある。

 始点1と終点2を定めて,特にリキまないで1から2まで2つの経路(A)と(B)で滑る場合,スキーの板と雪原との間に摩擦力が働かなければ(もちろん風の影響も考える必要がないと仮定して),どちらを通って滑っても終点2での速さに変わりはない。

     運動エネルギーは速さの2乗によって決まる
つまり,どちらを通って滑っても終点2での運動エネルギーは変わらない。このことから,重力がスキーヤーに対してする仕事について,容易に次の結論が導かれる。

    重力は保存力である。重力のする仕事によりエネルギーが変換することはあっても,力学的エネルギーの範囲内でのことであり熱が発生することはない。
摩擦力の働かない雪原上は(そのような雪原があったとして),保存力(重力)の場≠ナあるといえる。


散逸力(非保存力)があると .....

しかし摩擦力や空気抵抗が働くと事情は違ってくる。同じ速さで始点1を通過しても,終点2での速さは経路により異なる。

摩擦力や空気抵抗がする仕事は,運動エネルギーや位置エネルギー(つまり力学的エネルギー)の一部またはすべてを熱に変えてしまう。そこで、このような力のことを散逸力という。

    力のする仕事が物体の移動経路で違うとき,この力を散逸力とよぶ。物体が散逸力を受けるとき力学的エネルギーは保存されない。
“散逸”の名は熱が温度の低い方へ伝導して,簡単には回収できないことを示唆する。

スキーの例に戻ると,摩擦によって発生する熱の量は経路(A)と(B)で異なるのが一般的だ。

となると、終点に対する始点の相対的落差

h (始) - h (終)
によって決められる『重力の位置エネルギー』のうち,熱エネルギーに変換される量が2つの経路で異なる:

Q (A)Q (B)

そして,もしも経路(A)のほうが経路(B)よりもなめらかであれば,経路(A)で発生する熱量のほうが経路(B)で発生する熱量よりも少ない。

Q (A)Q (B)  (BよりAを通った方がスピードが出せる)

ということになる。

スキーをする人は,このように通る経路により運動エネルギーが(したがって速さも)違ってくることを知っていて,スピードを調節したり体のバランスをとったりしている。それがスキーをいっそう楽しいものにしているようだ。スキーヤーは体感によって運動エネルギーと重力の位置エネルギーをバランスよく振り分け,摩擦力から生じるこれらの力学的エネルギーの散逸もうまく利用することにより,スキーの醍醐味を満喫する。そうなって来ればもう本格的なスキーヤーといえるだろう。


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