なぜ送電において危険な高電圧の電流が使用されるのか、ということは重要だ。わが国ではふつう15〜50万V 、所によっては100万Vで送電されている。100万Vのほうが50万Vよりも送電のロスを4分の1に抑えられる。(余談であるが、100万Vもの高い電圧を支える碍子をつくれる会社は、世界でただ一つ、「日本ガイシ」だけだ。)
かつて、交流なら電磁誘導が利用できるので、昇圧・減圧に好都合だと考えたテスラが、直流有利説をとっていたエジソンと激しく対立し、エジソンの会社を出て行かざるをえなくなったことは余りにも有名だ。
陸地を越えて、あるいは島づたいに、高電圧送電線が走っている。送電そのものに交流でなければならない大きな理由は見当たらない。電力 V I [W = J/s] の輸送において直流より交流の方がいいのは、相互誘導を利用する変圧器(トランス)が使えるからだ。
電磁波の放射エネルギーは直流電流の方が交流電流よりも低いので、そのぶん電力損失では有利だ。ただし直流のままでは変圧器は無意味になる。発電した交流電流を直流で送電しようと思えば、先に昇圧し,そのあとで直流に変換して送電し、利用者の近くに届けてから、ふたたび交流に変換してから減圧すればよい。頻繁に交流・直流の変換をする必要があるので,変換にかかるロスはできるだけ小さい方がよい。
同じ電力 V I [W = J/s] を輸送するのに、電圧 V [V] を高くして電流 I [A] を小さくした方が、電流 I [A] を大きくして電圧 V [V] を低くするよりも熱となって失われる電力 I 2R [J/s] が少なくてすむ。これは直流、交流を問わず言えることだ。したがって、家庭や事業所など電力を利用するところで減圧するまでは、高電圧・小電流で電力を輸送するとよい。
なぜ現在のように、交流がさかんに使われるようになったか、理解してもらえたかな。発電所でつくりだされた電気エネルギーを送電するために、昇圧変圧器(トランス)が使われる。
変圧の際にエネルギーは保存されるので(ただしトランスの鉄材での発熱は無視して考える)、電流と電圧とは互いに反比例する。 電力の式 P = V I を参照のこと。P は単位が [J/s]で次元[ エネルギー/ 時間 ]をもつ。実際に入力(1次)側と出力(2次)側のコイルの巻き数によって電圧を定めることが出来るのを確認すれば、相互誘導もよりよく理解されるだろう。