第2講 「エネルギーとは何か」その2   
C1. 物質存在(質量)のエネルギー
Home Menu Top Information Back Continue

太陽定数1.96cal/(cm2分)から逆算して、太陽は1秒間に3.85×10 26Jのエネルギーを放射していることがわかっている。これは1.55×10 7Kという高温の太陽コア(中心部分)で、水素原子核どうしが融合してヘリウム原子核になるときに減少する質量m〔kg〕が質量欠損エネルギー
    E〔J〕 = m〔kg〕・(c〔m/s〕) 2
として解放されているものだ。

太陽のコア ―中心から約10万km以内での高温・高密度の水素プラズマは、太陽の誕生以来約46億年燃えつづけている(太陽の半径はおよそ70万km)。そのため、水素の存在比は誕生時の半分にまで減少し、その分だけヘリウムの割合が増加している。

コアで水素の原子核が核融合するためには、電気的なクーロン斥力に逆らって原子核どうしが近づかねばならない。そのための条件は、核子のすぐ近くに別の核子が存在するほど高密度で、核子の熱運動エネルギーが十分に大きいほど高温なことである。

 (図)太陽内部での水素とヘリウムの割合(%).


ヘリウムの原子核は2個の陽子と2個の中性子から構成されている。核力により引き合う強さは、数百万電子ボルト(eV)程度の大きさである( 1eV = 1.60×10 -19 J; 1V の電位差を設けて電子を加速する仕事、または電子が得るエネルギーのことを1電子ボルトという )。


高温・高圧の条件の下で、クーロン斥力のポテンシャルの壁を乗り越えうる運動の勢い≠もった核子のペアが核力で結合したとき、質量欠損のエネルギーが解放される。「解放される」というのは要らなくなるという意味で、あたかも月面のクレーター山を登る際には勢いをつけて上る必要があるが、いったん山頂に達した後はむしろ制動をかけながら蟻地獄のような穴に滑り落ちていくのと同じだ。

粒子が集まって束縛系をつくっているとき、これらの粒子を引き離してばらばらにしてしまうために必要なエネルギーを結合エネルギーという。ちょうど蟻地獄で一緒になった複数匹の蟻たちが別れ別れになるためには、穴の斜面をよじ登るエネルギーが必要になるのと似ている。

そのように考えれば分かりやすいと思うのであるが、下図の核子同士の結合エネルギーを表すグラフのかたちの意味するところは、鉄よりも軽い原子核核子の集団(小さな核子集団小だんご=jではさらに核子の数を増やしてだんご≠大きくするようにはたらく(核融合しやすい)ので、太陽の中と同じことが起こり要らなくなったエネルギーが放出される。

ところが穴に落ちた蟻の個数が増えてくると、からだの重なり合う大きさで穴が埋まってきて、ついに難なく脱出できるようになるだろう。つまり、鉄よりも重い原子核(大きな核子集団大だんご=jでは斜面が外側に向かい集団を解くようにはたらくので、核分裂を誘発してエネルギーを放出しやすいというわけである。

(図)原子核の平均結合エネルギーは質量数にどのように依存するか.
横軸: 原子核の質量数 →
 


物質でも、変化が原子のレベルを超えて原子核のかたちが変化するとき、質量がm [s] だけ消滅すれば、それと同時に m c 2 [ J ] のエネルギーが発生しているのだ。原子力発電の核分裂や太陽エネルギーの源である核融合反応で扱われるエネルギーはこれに類するものだ。


約150億年前、ビッグバン(大爆発)とともに宇宙が誕生した。水素とヘリウムが生まれ、原子核同士の衝突を繰り返して星がつくられた。太陽を生み、地球の源になったこの反応は「核融合」と呼ばれる。

われわれに最も近い恒星である太陽の質量は 2×1030 kg、主として水素からなる巨大なガス塊で、その自重は中心で1.4×1011 atm という高圧(温度約 1.5×107 K、密度約 120g /cm 3)に支えられ、球形を保っている。太陽は、水素を原料にして核融合反応を起こし、

 41H  →  4He  ( 中心部分で起こっている核反応 )

それによりヘリウムをつくりながら、放射率にして

 3.9 × 10 26 J /s

という割合でエネルギー(主として光)を放射し続けている。太陽は誕生以来46億年かけて水素を燃やしているが、中心に近い(半径にして約2割以下の)一部で水素とヘリウムの割合が逆転しているだけである。水素が無くなるまで100億年、安定期間にしてもまだ50億年はかかるものと考えられる。

太陽の表面温度は約6,000度。岐阜県土岐市の文部省核融合科学研究所で達成されたプラズマの温度は、その約8,000倍にあたる5,000万度あった。地上で太陽をつくろうとすれば、実験での持続時間の短さを考慮して約1億度なければなるまい。


Home Menu Top Information Back Up Continue

Please let me know if you can contribute to this page. ご意見ご感想をお寄せ下さい。


|メニュー(「社会とエネルギー資源」の受講生のみなさんへ)|