| ◆ ◆ ◆ | 第9講 「エントロピー増大の法則」 | ◆ ◆ ◆ |
| C2. 熱力学に学ぶ |
| Home Menu Toppage Information Back Continue |
地球のまわりのエネルギーの流れは、様々なところで、様々なしかたで生命環境にとって有意義に作用している。植物に光合成をさせたり、海洋や陸地から水を蒸発させるのは、地球系のエントロピーを増加させないはたらきだ。
地球に対する高温の熱源として太陽を、低温の熱源として宇宙空間を想定するならば、もし地球が理想気体と同じ振る舞いをすればエントロピーは減少しない。このような模型は現実を単純化しすぎているので、注意が必要である。単純すぎる第1の事情が理想気体≠たりにあるのは当然である。しかし、カルノーサイクルの示すところは、地球系のまわりでのエネルギーの流れ
太陽放射
→(地球磁場)→(オゾン層)(大気)→
地球
→(赤外線放射)→(大気)→
宇宙空間
【物質の出入りがない閉鎖系のエントロピーは、増加し続けても不思議ではない。たとえ条件がそろっていても、せいぜいがエントロピー一定だ】ということが重要なのである。このエントロピーが何を意味するのか、気になるところだと思うが、大胆な表現をすればごみ≠ワたは排泄物≠ノ相当するものである。その代表格が二酸化炭素などだ。二酸化炭素も他のごみと同様にリサイクルすることが出来れば、それに越したことはない。つい最近(半世紀まえ)まで、江戸・東京という大都会から出てくる排泄物でさえ、たいへん有効にリサイクル利用されていたのだから......。
地球系を熱機関の作業物質にたとえると、たいへん興味深い考察を行うことができる。この場合、地球系のエントロピーは増加するか、または一定に保たれることはあっても、決して減少しないことになる。
熱機関と違うところは、第1に、地球が太陽から受け取るものは熱エネルギーではないことだ。温室効果ガスを適切にコントロールするなどして、上手にやりくりすれば、地球は熱的な意味での快適さを保持することができる。
第2は、地球系は作業物質と呼ぶにしてはあまりにも複雑な、いくつもの相互作用し合う物質系と生態系からなる複合体である点だ。たとえば、長い年月をかけてたどり着いた配置に乱れが生じたら、時間をかけて、またべつの平衡分布に移行していく。絶えることのない物質変換の繰り返しが、より安定な状態への変化を可能にしてきた。
ある種にとっては、種の保存に都合の悪い高エントロピー物質も、べつの種には高栄養物として取り込まれ、いわゆる「負のエントロピー」生産が可能な生態系相互作用がありうるのだ。この相互作用のサイクルに乗らない、または、生態系の処理が追いつけないほど急峻な人工物質の拡散などは、自然の巧妙な仕組みを狂わせる。
第3は地球が完全な閉鎖系ではない点にある。どれほどの物質の出入りがあるかに関しては、現在のところハッキリとした効果云々はできない。
まず間違いないであろうことは、太陽(高エネルギー源)からの放射によるエネルギーが地球圏内にそのまま影響を与えたり熱エネルギーに変換されたりした後、ほとんど全てが宇宙空間(低温)に赤外線放射として出て行っていること。そのようなエネルギーの流れが、地球からエントロピーを持ち出しているということである。
*富山小太郎訳:『ファインマン物理学 U』(岩波書店)第19章〜第20章参照*
メニュー(受講生のみなさんへ)