エネルギー散逸開放系 地球   
D. 放射(輻射)の流れ
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 地球は物質の出入りがほとんどない、いわゆる閉じた系である。それにもかかわらず開放系と銘打ったのは、光のエネルギーに目を向けたいからだ。

 エネルギーの流れ方については、ちょっと注意する必要がある。物質とは異なりエネルギーは完璧な循環のループには乗らない。これは、エネルギーの出入りでは地球が開放系であることと関係している。しかも現在の地球環境は、人類活動の始まる以前からの長い時間で考えないと説明がつかない。

地球には下図のようにたえず太陽放射のエネルギーが入ってきている。大気が現在のような成分になってからのち、地球上の生き物がちょうど「光の窓(波長約400〜200nm)」あたりの波長の可視光に敏感なように適応してきたことも肯ける。一方地球からは、太陽エネルギーから最終的に熱に変換されたエネルギーと地球内部で生じた熱とが、ともに電磁波のかたちで宇宙へ向かって放射(赤外線放射)されて出ていく。大気中には、その赤外線放射を妨害する物質 ― 赤外線を吸収しやすい二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス ― がある。

(図)縦軸は地球大気外から電磁波の届く高度(km);横軸は波長を10のべき指数で表す対数目盛り

 宇宙の温度は現在の地表付近での平均温度(約15℃、ただし1990年代後半には16.4℃を記録した)よりもずっと低い ―温度差が285度もある―。宇宙空間は、いわば温度が低く一定に保たれた低温熱源といってよい。もしも温室効果ガスが無かったなら、地球の温度はマイナス何十℃という低温にとどまってしまったであろう。

長い地球の歴史の中で人的活動の目立たなかった時代(つまり、二酸化炭素の量が自然発生の範囲内の時代)には、入ってくる量と出ていく量の均衡がうまく保たれて、上記のように生命環境として都合のよいものになっていた。そこには、何千年という有史のタイム・スパンをもはるかに越える長い歴史があった。しかし産業革命以後、二酸化炭素の大量排出などの人的活動は、きわめて高い温室効果をもたらしたと考えられる。


太陽光線に含まれる紫外線
 紫外線領域を拡大してみると、次のように波長により上空大気に吸収される率の異なるのがわかる。温室効果のややミクロな説明のためには十分に詳しい図である。(近年オゾン層の破壊が問題となっており、とくにオゾンホールと呼ばれる層のやぶれが顕著に表れる極地地方のようすは次の通りにはなっていない。)

(図)紫外線の届く高度(km);波長単位10ナノメートル(1nm=10-9m)

紫外線は、波長の長い方から順にUVA:320〜400nm、UVB:280〜320nm、UVC:〜280nmと区分される。

これらの紫外線を吸収する気体分子として、N2、O、O2、O3などがある。図の左側では、極端紫外線がその強いエネルギーでN2やO(高度170〜130km)やO2(120〜100km)などを電離したり、あるいはO2などを解離して(110〜90km)、いわゆる電離層を生成している。高度50〜30km付近では、紫外線のエネルギーを吸収したO2分子が解離して、オゾンを生成している。その場所でオゾンはUVBやUVCをよく吸収する。


一方、ヒトにとっての可視光線はグラフ横軸で右端より外側にある。波長でいえば400nm-700nmあたりだ。グラフは、320nmあたりから地上に届く光が強くなることをことを示しているわけだが、もっと広範な地表到達光のスペクトルを分析して黄色光がもっともエネルギーの大きいことが知られている。これは、太陽光のもとで生きてきた地球上の動物や火を利用して生きてきたヒトが黄色光にもっとも敏感に反応することに反映されている。

なお、夏場だけでなく5月・6月から紫外線の情報には注意したいものだ。雪国でスキーを楽しんだ数日で、アッという間に日焼けした、というような経験談を持ち出すまでもないだろうが、もはや小麦色の健康色ということばは死語になりつつあるのだろうか。

 ところで「高温部から低温部へと流れる」熱エネルギーの性質を指して、エネルギーは散逸するものだという。高温物体のもつ熱エネルギーを有効に使わないで放射線として散逸させるのはもったいない話なのだ。

熱も含めたエネルギーの流れる過程で、たくさんの利用段階をもうけ、無駄に捨てることなくじょうずに利用しようというのが省エネルギーの発想である。「省エネルギー」のくふうと「廃熱利用」の推進は、少資源国日本にとっては大変有意義なテーマだといえる。


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