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| ◆ ◆ ◆ 21世紀によせて ◆ ◆ ◆ |
| C. 「豊かさのものさし」について考える |
話は国のレベルに跳ぶ。まず話題になるのは国民の “豊かさ” を表す “ものさし” があるだろうか、ということである。唐津一氏はその著書『ずぼら産業繁栄論』(PHP研究所、1998年11月刊)*の導入部で、世帯がサービス産業に支払う出費の割合を“ゆとり”または“豊かさ”とする大変おもしろい論説を張っている。自由な競争がもたらしたサービス産業の質の変化は“ずぼら産業”とよぶにふさわしいとする。わが国の平均所帯の“ずぼら係数”は30%で、これは悪くない数字だともいう。
現在マネジメントを考える立場にある人たち、ニュービジネスについて斬新な見方を模索中の人たちにとっても大いに参考になる主張だと思う。コンビニエンス・ストア、ファーストフード・チェーンなどの非製造業種が流通の効率化やマニュアル化によって成功した例を引き合いに、サービス産業や環境産業を始めとするあらゆる業種に発展の可能性を見いだしている。
1990年代後半の金融・証券業界の不祥事に始まった不況は、都市銀行による貸し渋りなどから長引いてしまったこと、この業界は経済活動の『血液循環』の役割を担うので、たとえ25兆円程度の規模でも日本全体で500兆円にもなるあらゆる産業に混乱をもたらしたことを氏は指摘する。しかし金融ビッグバンによって業界にあった閉鎖性にも終止符が打たれるであろうこと、希求されていた基本的原理が見いだされれば、競争原理は新しい頼り甲斐のあるアイデアを生み出す可能性もあること、そして、――氏の主張の中心部分をなすのはここのところであるが――金融・証券業界を軌道にのせる条件は、自由競争のせっぱ詰まった状況にある“ずぼら産業”の成立条件と重なるとも説く。
個人的アイディアが富を生むとする発想と分析はそれ自体たいへん興味深いものであるが、次は地球的規模で地域のもつ価値を指標化する話だ。
![]() 一人当たり豊かさの試算(単位:千ドル)―1990年 のデータをもとに世界銀行が1995年に作成した。 |
経済企画庁は、大気汚染や水質汚濁、土地開発、森林伐採などの環境破壊による日本の損失額は1990年で8兆4,500億円、国内純生産の2.3%であると発表している(1995年)。この考えの根底には、地球サミット(1992年)で導入が提唱されたのち、たとえば「グリーンGNP」方式や「グリーンGDP」方式などとして確立されつつあった新たな指標が影響している。要は、自然環境の損失や環境対策の費用などをGNPやGDPから差し引くことだ。
世界銀行は、主要国の一人当たりの富を経済的、環境的価値などに分けて試算している(1995年)。その後も、経済と環境を両立させる「指標」づくりは検討が続けられている。1996年、ニューヨークで環境庁が主催、CSDが共催して開いた国際会議(テーマは「持続可能な開発のための指標」)などがある。(CSDとは、地球サミットで採択された「行動計画アジェンダ21」をフォローアップするために、国連経済社会理事会の下に設けられた委員会だ。)
実験・実習による体験やゼミ形式による討論を進める際にも、私たちは地域との関係という観点を忘れてはならない。人間生活には文化と政治・経済と科学技術が密接に関係しており、そのいずれが欠けても地域における活動の活性化は危うくなる。さらに視野を世界へと広げてみれば、ある地域の人間にできることは、世界中のどこへ行ってやっても、その地域の特殊性への配慮を忘れない限り、原則上すべてが実現可能なはず。ここに地域と国際との関係の基盤がある。
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21世紀へのマネジメントとは結局、地域と地域、国と国とがお互いの生活圏をみとめあいながら、地球という快適な共同生活の場を維持していくために協力することだといえる。大学教育で重視される教養の目的が人生の意味づけであるとすれば、その人生をはぐくむ地域と世界の成り立ちに目を向けるのは当然のことだろう。また、ときには地球を宇宙からながめるようなグローバルな視点をもち、世界の窓 を開いて地域のことも考えていこう。地球規模で考え、地域に対する配慮も忘れないことをグローカル(global +local )とも、またThink globally, but act locally! とも表現する。
『地球規模で考え、地域ごとに行動しよう!』Think globally, but act locally! という観点での調整を求められたのが、「温暖化防止推進法」と「省エネ法」の2つの法律案だった。2法案が何を目的として、どのように具体化されるのか、『社会とエネルギー資源』を学ぶ者としてじっくり考えたいものだ。
一口メモ2 「温暖化防止推進法」の目的は、97年12月の京都議定書の内容をできるところから実施して、地球の温暖化を防ぐことだ。これまで日本にこんな法律はなかった。1990年に比べて6%の二酸化炭素削減率という数字は、'90年頃までに環境対策に努め、すでに実績もあげていたわが国としては厳しいが、人類の健康や環境に関することであるから、現実的な効力のある法律の成立が望まれる。他方「省エネ法」は、従来からある「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に関するもので、改正案は通産省を中心に検討されてきた。



