ゼミ生によるレポート (1996年度教養ゼミ)
(注釈 ― ウェブ・マスターより:
すでに90年代後半に水資源を確保するダムが完成し、小豆島における水不足の問題は解決しています。90年代なかば以前の状況に関するこのページの記録は、現在の小豆島における水まわりを表現したものではありません。)
この数年来,瀬戸内海沿岸地方は夏場を中心とした深刻な水不足に悩まされている。僕の故郷の小豆島では特に被害が大きかった。この問題に関する自分の考えと小豆島のことを書いてみたい。
1.原因について
まず,第一の原因は瀬戸内海性気候にある。水問題に興味のない人でも,瀬戸内海に雨が少ないことぐらいは知っているだろう。瀬戸内は中国山脈と四国山脈に挟まれているため,雨雲の発生が少ないのである。これが最大の原因だ。岡山県のことを “晴れの国” と称する人もいるくらいである。第二は島という地理的環境に原因がある。不足する水はおもに海路を利用して補給される。瀬戸大橋のすぐ近くにある島々や淡路島とは異なり,本州とも四国とも陸続きになっていない小豆島に一度に大量の水を運び込むことは不可能である。原因の第三は小豆島の独特の地形および規模にある。瀬戸内海で最も高い山は小豆島の中央部にあって 標高 817m と,淡路島の 600m 級の山々を遥かにしのぐ高さだ。そのため雨水は容易に島から海へと流れ落ちていってしまう。ダムまたは貯水場を造成しにくい地形でもある。また淡路島に次いで島の人口が多く,それゆえ水の消費量も多い。
2.被害について
水不足がもたらす最大の被害は断水である。瀬戸内沿岸に限らずどこでも雨の降らない日が続けば断水になる。小豆島では最もひどいとき,16時間断水というのがあった。そのとき僕の家では,ダムからやってくる水以外にあてにできる水源があったので,困った事態には至らなかったのであるが,しかし,友人の話からは食事,風呂,洗濯等ふだん何気なく行われている生活行為が制約を受けることのつらさを窺い知ることができたのだった。
さて,断水によって引き起こされる被害もまた大きい。たとえば山火事である。山が高い小豆島では,水不足でなくとも山火事の消火作業には手こずる。断水時の山火事はいわずもがなである。山中のあちこちに設けてあるため池はすでに干上がっているので,消火用水としては海水が使われる。その手配にもまた大変な労力と時間とを必要とする。火事現場に海水が送り届けられるころには,すでに火災による被害は甚大なものになってしまっている。火事以外でも,観光客の減少とか醤油や佃煮などの地場産業,農作物への影響も大きい。水不足の深刻な年には観光客の数も,標準年の 80% 程度まで落ち込むそうだ。
3.対策について
現在ダムが建設中である。これまでで最大級の規模といわれるが,完成はいつになるのか知らない。しかし,ある詳しい筋によると,このダムができても小豆島の水不足は解決されないそうだ。町より小さな地区単位で海水を淡水に変える方法も採られているそうだが,焼け石に水であるという。僕は岡山市あたりから水道管を引くのが最も現実的だと思うがどうだろうか。ただし工費と工事にかかる日数は大変なものとなるだろう。そして, “晴れの国” を当てにするのは愚かなことと言われればそれまでだが。そんなこんなで,最終的には雨乞いか祈祷でもするしかないように思えてくる。
4.小豆島のよいところ
小豆島は素晴らしい島である。水問題について良くないところばかり書いてきたのは,僕が小豆島出身者であるため,ひいき目に見ることが難しかったためだ。春夏秋冬四季折々の姿がある。夏場のキャンプ,一年を通じての魚釣り,秋の紅葉狩りなどたくさんある。山でも海でもアウトドアを楽しむことができる。島内いたる所にキャンプ場が用意されている。経験のあるなしにかかわりなく,誰でもキャンプを楽しめるだろう。釣りは冬の一時期を除いてほぼ一年中楽しめる。魚の種類も豊富である。秋の紅葉は最高である。ロープウエイから渓谷を見下ろすもよし,自分の足で散策を楽しむもよし,最高の気分が味わえる。
観光地小豆島には交通の便がよいという大きなメリットがある。ジェットラインでなら大阪から2時間,岡山からはフェリーで1時間20分,高松からは1時間だ。日帰りも可能である。 『二十四の瞳』 で有名な “岬の分教場” や “88か所霊場” は一見の価値がある。特に “岬の分教場” には是非とも行かれるようお勧めしたい。映画のセットまでそのまま残されているので,何ともいえぬ不思議な雰囲気がある。
5.まとめ
このように素晴らしい小豆島がいまいち若者にうけない。その理由の一つに,夜間の遊び場所が少ないことがある。24時間営業の店も少ない。しかし僕は,島がそのことで無理をして変わってはいけないと思う。島は時代とともに少しずつ変わってきてはいるが,個人的希望として,あまり島をいじくって欲しくはない。ここ10年ほどの間に僕の家の近くもすっかり変わった。昔よく見かけた昆虫が減り島の緑が少なくなった。自然の豊かさを失えば観光地小豆島の魅力はなくなってしまう。