田中信博・妹尾 護 |
近年,海洋汚染が進んでおり,それらは生活排水,工場排水等を含む河川の流入が一因となっている.また,臨海工業では,工場からの,煤塵や粉塵も関係があるものと考えられる.海洋では,一度堆積した重金属はその場に長く存在するため,そこを生活の場とする魚介類に重金属が蓄積される可能性があり,公害に発展する場合もある.ここでは,瀬戸内海の水島沖〜笠岡沖を中心に,重金属元素が,蓄積しやすい底質土を研究対象として,重金属を含む各元素の分布状況や,元素の濃集原因について調べた.研究地域では,水島工業地帯があり,また,かつて水島沖に銅の精錬所が存在していたため,それらが,底質にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的とした.
分析方法
各ポイントにて試料採取
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試料を50℃で乾燥(約2日間)
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ふるいを用いて,30メッシュ以下の試料を回収
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瑪瑙乳鉢で200メッシュ程度に粉砕
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粉末ペレット作成(試料5gを10tで約1分間加圧)
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蛍光X線分析装置で元素分析→分析結果を考察
底質土中の元素分布
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調査結果
1.水島沖では,重金属元素(ニッケル,銅,亜鉛,鉛など)の濃度は低く,かつて銅の精錬所が存在した上水島周辺でも,銅の濃度は低い値を示した.それに対して,寄島沖や,笠岡沖では,重金属元素の濃度が田の地域よりも高い値を示した.
2.底質試料の水ひによって得られた細粒の粘土試料は,重金属元素を特に多く含むことから,粘土鉱物に重金属元素が吸着されているものと考えられる.
3.粘土鉱物を多く含む底質土には,炭素が多く含まれている.寄島や笠岡沿岸では炭素の含有量が他の地域よりも多いため,粘土が多量に堆積していると考えられる.重金属元素の濃度が高くなったのはこのためである(重金属元素濃度の分布と炭素濃度分布の図を比較)
4.重金属元素の供給源は河川からの流入や道路脇粉塵の飛散,工業活動(石炭・石油)によるものなど様々な要因が考えられる.瀬戸内海の海底は砂が少なく,粘土層が多く分布しており,そのため,重金属元素を固定しやすい環境になっている.砂の分布域の減少は,海砂の採取が影響を与えていることが知られていることから,瀬戸内海海底の環境改善のためには,沿岸の鉱工業を含む産業活動の排出物規制だけではなく,多方面からの取り組みが必要である.